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2026.10.30

絶縁した長男から届いた、内緒の贈り物

先日、海洋散骨業者さんからのご紹介で、76歳の男性のお宅へ相続相談に伺いました。

そばにいたのは、しっかり者の娘さん……と思いきや、身内ではない50代のサークル仲間の女性でした。

遠方にいる一人息子さんとは疎遠になっており、お金の管理はすべてその女性に任せているとのこと。そしてご本人は、

「財産は、この人にあげたい」

と話され、遺言書の作成を希望されていました。

ただ、受け答えからは、すでに認知機能が低下している可能性も感じられます。
この段階で遺言書を作ることができるのか。
そして、同席している女性は、本当にご本人の意思を尊重して支えている方なのか。

もちろん、最初から疑ってかかるわけではありません。
しかし、大切な財産が家族以外の方へ渡る相談だからこそ、ご本人の判断能力と本当の気持ちを、より慎重に確認する必要があります。

相続コンサルタントの役割は、相談者の希望をそのまま形にすることだけではない。必要なときには立ち止まり、専門家や仲間の意見も聞きながら、ご本人にとって本当に大切なものを守ることだと感じています。

一方、6か月間にわたり伴走してきた70代のEさんは、公正証書遺言の手続きを終えた瞬間、

「はぁ~、肩の荷がおりた!」

と、今まで見たことのないほど安心した表情をされました。

ご主人を亡くし、大分県で独り暮らしをされているEさん。
遠方で働く二人の娘さんに迷惑をかけたくないという思いから、墓じまい、海洋散骨、別荘地の処分、財産や保険の見直し、認知症対策、家財道具の整理、そして公正証書遺言まで、一つずつ進めてきました。

その仕上げとなったのが、娘さんたちへの直筆の手紙です。

「そこだけは、私の字で遺したい」

何度も書き直された手紙には、普段は照れくさくて言えない母親の愛情があふれていました。
財産をどう遺すかだけでなく、どんな思いを遺すか。
相続対策の本当のゴールを見せていただいたように思います。

そして、もう一つ忘れられない出来事がありました。

生前対策から事業承継まで関わってきた建設会社の創立55周年記念式典です。

高齢の社長は長男に会社を継いでほしいと願っていましたが、長男は家を出て家族と絶縁状態。
その中で、40代の長女さんが「私がやる」と覚悟を決め、会社を引き継ぐ準備を進めてきました。

式典が無事に終わったあと、社長の奥様が、

「お姉ちゃんが立派に引き継いでいく姿を、息子にも見てほしかった」

と、寂しそうにつぶやかれました。

そこで、ようやく私はお伝えしました。

「今日のお料理の食材は、長男さんが内緒で提供してくれたんですよ。『こんな形でしか協力できなくて』と話されていました」

「長男が?」

社長も奥様も長女さんも、涙を流されました。

家族から離れていても、長男さんの心まで離れていたわけではなかったのです。

遺言、相続税、認知症対策、事業承継。どれも大切です。
しかし、その奥には、言葉にできない家族への思いがあります。

その思いを見落とさず、必要な専門家や仲間と力を合わせ、次の世代へつないでいく。

それが、私たち相続コンサルタントの仕事なのだと思います。


この記事を書いた人:佐藤公重

https://270mifamilia.com/

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