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2026.09.10
相続で揉めないために家族会議を開こう。開けばいいってもんじゃない。
「相続でもめないためには、家族で話し合っておくことが大切です」
私はいつもそうお伝えしています。
では、家族全員を集めて「さあ、今日は相続について話し合おう」と言えば、それでうまくいくのでしょうか。
実は、そう簡単ではありません。
家族会議にも、やり方があります。
例えば、お父さんの相続について話し合うことになりました。
お父さん、お母さん、長男、長女。
そこに長男の奥さんもやってきました。
ちょっと待ってください。
私は基本的に、こうした家族会議では、まず当事者を中心に話し合うことをおすすめしています。
長男の奥さんが悪いわけではありません。
ただ、相続について意見を出す人が増えるほど、それぞれの立場や感情も入ってきます。
「うちの主人は長男なんだから……」
そんな一言がきっかけで、それまで仲の良かった兄妹の空気が変わることだってあります。
だから最初の家族会議は、誰が参加するのかを考えることも大切なのです。
さて、久しぶりに家族全員が集まりました。
ところが、
「小学校のとき、みんなで行ったディズニーランド、楽しかったなあ」
「そうそう。お前、ミニーに抱きついて離れなかったよな」
「あのときのビデオ、まだあるよ」
……おいおい、相続の話はどうなったん?
仲が良いのは結構なことです。
でも、せっかく相続について話すために集まったのなら、今日は何について話すのかを最初に決めておいた方がいいでしょう。
そして、ようやく本題に入ります。
すると長男が言いました。
「財産の分け方なんて法律で決まってるやろ。お母さんが半分、残りを俺と妹で半分ずつや」
確かに、法律には「法定相続分」という相続割合が定められています。
でも、必ずその割合で分けなければならないわけではありません。
今度は妹が言います。
「でも遺言書があったら、絶対その通りにしないとダメなんでしょ?」
これも、必ずしもそうとは限りません。
相続人全員が納得すれば、遺言書とは違う分け方ができる場合もあります。
相続の法律や制度は、思っている以上に複雑です。
中途半端な知識で「こうに決まっている」と話を進めてしまうのは危険です。
さらに困るのが「隣の家ではこうだった」という話です。
「隣のお父さんが亡くなったときは、兄弟でこう分けたらしい。家族構成も同じようなもんやし、うちもそれでええやろ」
いえいえ。
隣の家族と、あなたの家族は違います。
仮に財産額が同じでも、家族構成が同じでも、親子関係や兄弟関係、これまで一緒に過ごしてきた時間まで同じ家族はありません。
100の家族があれば、100通りの相続があります。
そして、初めて家族会議をする家庭でよく起こるのが、
「で、何から話したらいいの?」
という問題です。
そこで、いきなりこんな話題から始めてしまいます。
「親父、貯金いくら持ってる?」
するとお父さんは、
「なんや、俺のお金を当てにしているのか!」
これでは家族会議どころではありません。
相続の話だからといって、最初から財産の話をするのは避けたほうがいいかもしれません。
むしろ、
「これからお父さんとお母さんは、どんな暮らしをしたい?」
「今、一番気になっていることは何?」
そんなところから始めた方がいいでしょう。
財産を聞く前に、親の気持ちを聞くのです。
そして最後に、もう一つ気をつけたいことがあります。
家族の中の「力関係」です。
「俺が長男としてちゃんと考えている。みんなは俺の言う通りにしたら大丈夫や」
本人は家族のためを思って言っているのかもしれません。
でも、声の大きな人の意見だけで話が進むと、ほかの家族の心には小さな不満が残ります。
その小さな不満が、実際に相続が起きたときに大きくなることがあります。
だから私は、家族の中で「自分が一番しっかりしている」と思っている人ほど、一歩引いてほしいと思っています。
話すことより、聞くこと。
決めることより、まず家族それぞれの想いを知ること。
家族会議の目的は、誰かが正しい答えを出すことではありません。
家族それぞれが何を考えているのかを知り、共有すること。
そこから始めればいいのです。
家族会議の進め方に、一つの正解はありません。
なぜなら、
同じ家族は、一つとしてないのですから。
たつみ相続相談オフィス/辰巳博
